アメリカナマズの話 ①出会い編

私は、釣りビジョンという配信チャンネルが好きでよく視聴している。

釣りビジョンは、読んで字のごとく、「釣り」に特化したコンテンツであり、あらゆるジャンルの釣りが紹介されていて、釣りに行けない人も釣りに行った気分になれる大変ありがたい存在である。

釣りビジョンには、釣りのジャンルごとにエキスパートが存在し、自身の冠番組を持って活躍している。彼らは自身の番組の中で、必ず釣果をあげなければならないし、解説も上手でないといけないので、なかなか大変そうなお仕事である。

数あるエキスパートの中で、私は村田 基(むらた はじめ)さんという方の番組が好きだ。村田さんは、釣り界隈では超有名な人気者で、キングとか王様というニックネームで呼ばれて多くのファンから愛されている方である。海外でも活躍されており、英語圏ではジムという愛称で呼ばれているらしい。ハジメさんだからジムなのか。

この村田さん。とにかく凄い。釣り番組のナビゲーターとして、目的の魚を取材期間中に実際に釣りあげなければ番組が成立しないのだが、この方は、ほぼ確実に成果を出すだけでなく、ちょいちょい日本記録だの世界記録だのを叩き出して来る。いわゆる「持っている男」なのだ。

昔懐かしいTBSの動物奇想天外で、千石正一先生が現地ガイドでさえもめったに目撃しないくらい珍しい野生動物をいとも簡単に見つけ出していたのと良く似ている。

UMAを求めて世界中を飛び回った挙句、絶対に成果を出さないテレ朝の「水曜スペシャル」の川口浩さんとは全く逆のコンセプトの人が村田さんである。ちなみに川口浩さんの活躍は、アーカイブを視聴するより、嘉門達夫さんの名曲「ゆけ!ゆけ!川口浩!!」を聴いていただいたほうがダイレクトにその様子が伝わると思う。

ちなみに村田さんの「魚種格闘技戦!」と「水曜スペシャル川口探検隊」の中間のコンセプトで視聴者を楽しませてくれるのが、TBSの「クレイジージャーニー」でメキシコドクトカゲをバミっておいてくれた加藤教授である。加藤教授はテレビに出ると千石先生の十分の一程度のクオリティのダジャレも沢山喋ってくれるので、Z世代のサラリーマン諸氏にとっては、明日の上司とのやりとりに対する心の耐性を獲得するための良いメンタルセットの素材となるだろう。

さて。本題にもどろう。

この村田さんの人気コンテンツ「魚種格闘技戦!」の2007年10月の放送で、おそらく日本で始めてアメリカナマズの釣りというものが紹介された。

茨城県の霞ヶ浦水系に、アメリカナマズという外来魚が大繁殖していて、これを釣って食べようという企画だったのだが、ものすごく楽しくなってしまって、私は画面に釘付けになった。

アメリカナマズは2005年に特定外来生物に指定されており、私も当時、カミツキガメが一次指定の候補にあがっていたので、環境省の分類群専門家委員(爬虫両棲類)という立場でこの法律と向き合っていたため、うっすらとアメリカナマズの存在は意識していたのだが、同じく特定外来生物のブラックバス同様にアメリカナマズも釣りの対象魚として楽しまれていて、しかも、ブラックバスと違って、釣ったアメリカナマズを美味しく食べることができるという事は意識していなかった。食用目的で日本に持ち込まれ、その後、食べ物として普及しなかった『美味くねぇし』という生き物は沢山いる。アメリカナマズもそんな存在だろうと思っていた。

「魚種格闘技戦!BATTLE-84」は、村田さんの地元である常陸利根川が舞台となっていた。村田さんが竿を出すなり、いきなり爆釣して、その場で村田さんのお友達の料理人が調理して、村田さん自身が速攻でバリバリ食べはじめ、美味い美味いと大盛り上がりする大忙しな回であった。

とにかく美味い美味いを連発されたものだから、『え?そんなに美味いの??釣りの醍醐味なんかはこの際どうでもいい。とにかくに食べてみたい』と思った。

村田さんは、霞ヶ浦に、潮来釣り具センターという大きな釣り具屋さんを営まれている関係上、日ごろから霞ヶ浦への地元愛を強く表明しておられ、霞ヶ浦において、単なる厄介者としてだけ紹介されていたアメリカナマズをメジャーな釣り対象魚として普及し、おいしく食べて外来種対策の一助にもなろうと努力されていたのだった。初回放送から20年近く経過し、いまでは全国から大勢のアメリカナマズ狙いの釣り客が霞ヶ浦を訪れるようになっているが、これはほほ全て村田さんの普及啓蒙の成果といっても過言ではない。

村田さんは、アメリカナマズをヒラメより美味いとか 蒲焼にするとウナギより美味いとか、やたらと美味い魚であることを強調する傾向がある。

あんなに簡単にバカスカ釣れて、美味い美味いと連呼されたら、誰だってアメリカナマズを釣りに行きたい!って思うのではないだろうか。

そんなこんなで。私もまんまと村田さんに釣られてしまい、「ウナギより美味いアメリカナマズの蒲焼ってなんなんだよ」という幻想を追い求めて、アメリカナマズとの長い長い闘いが始まったのである。

つづく。




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